(PART1からの続きです)
というわけで、フッテージの上映のあと、ザック・スナイダー監督との
質疑応答タイムとなりました。
以下、監督の言っていたことをまとめると;
●「ウォッチメン」の原作は、僕が映画学校時代、話題になっていたので読んだ。とても面白いとは思ったが、自分が監督するなんて夢にも思っていなかった。
●「300」のあと、ワーナーからこの映画のオファーがきたけど、
まず断った。これほどアメコミ・ファンに愛され、またテリー・ギリアム他
いろんな監督がラブコールを送ってる作品だから、自分がやるものじゃないと思ってた。
●けどワーナーと話すうちにだんだんやろうか、という気になってきた。
ワーナー側は、原作を現代にもってこうとしてたけど、僕は原作どうり
1985年のアメリカにすべきだと主張し、それを通した。
●もし”現代の話”にしてしまったら、原作者が、1985年を舞台にしたからこそ盛り込むことのできた視点ではなく、僕の政治的視点で描く部分が
出てくる。そんなの誰が興味持つ? 僕は、そこに注力したんじゃなくて、いかにクールな絵作りをするかに、専念したいからね。
●それと、”1985年”の時代設定で描いた方が、逆にいまのアメリカや世界のかかえている矛盾が見えてきた。
●「ウォッチメン」はポリティカルで、知的で、セクシー、バイオレンスで、クールなアドベンチャー・ドラマとしても楽しめるし、深読みして、ウォッチメンの意味するもの、、自分の正義感を押し付ける、、という意味で
アメリカもまた大きなウォッチメンなんだな、と考えながら観ても得るものがある。
●撮影するとき、原作と脚本と自分で描いた絵コンテを並べながらシーンを検討し、撮影したよ。映画を作っていくうちに、自分が本当に「ウォッチメン」が好きで、そして、この作品に対し責任がある、、と思うようになってきた。僕がもしこの映画の監督を引き受けないで、誰か他の監督が撮って原作が台無しになったら、それはそれで僕は「自分の(断った)せい」と責任を感じるだろう。撮っても撮らなくても責任感じるなら(笑) 撮ったほうがいいよね。
●キャスティングに関して、僕は話題性のある人を使う気はなかった。ちゃんとそのキャラを演じられる人であることが重要だった。ロールシャッハ役のジャッキー・アール・ヘイリーは、小柄でがっしりしてて、顔も怖くて(本当はいい奴だけど)、、ロールシャッハにピッタリだった。他のキャストも素晴らしい。
●アメコミとグラフィック・ノベルの違いはね、紙一重だと思うけど、前者がやや子どもより、後者がシリアスで大人っぽい、、ということかな。僕は子どものころ、いわいるアメコミは子どもっぽくて嫌いだった。でも、母がなぜか勘違いしてHEAVY METALというコミック誌を定期購読してくれた。SEXとバイオレンスなマンガばっかりで興奮したよ(笑)
●ウォッチメンは、アメコミ・ファンが非アメコミ・ファンに「まずこれ呼んでご覧よ」とすすめるゲイトウェイ(門戸をひろげる)役割を担うコミックだと思う。
●最近ハリウッドでアメコミ原作映画多いという傾向を、オリジナリティがない的に嘆くことはないと思う。文芸作や小説に原作をもとめる映画は多い
からね。観客が楽しめる映画になるなら、その物語の出展元は関係ないよ。
●僕はアクションというかアクションの殺陣が好きなんだ。だからアクション・シーンは、誰のパンチが相手のどこにヒットしたか、見せるようにしている。それがスピード&スローモーションを組み合わせてアクション・シーン撮る理由さ。(このリズムは)コミックのページをめくる感覚に似てるかも。
●この映画のドラマは、とても複雑(スーパーコンプリックス)で、幾層にもわかれ、ミステリー、ポリティカル、セクシー、アクションといろんな要素がタペストリーのようにお織られている。どこをとりあげても楽しいよ。
僕も彼に質問しました。
すぴ:監督は「300」と言い、今回の「ウォッチメン」といい、沢山のヒーローを映画の中で殺しまくってます(笑)。そんな監督のヒーロー像とかあれば教えてください。
ザック:そうですね。まず、こういう映画のヒーローと現実のヒーローは当然違います。「ウォッチメン」に登場するヒーローは、みな神話に出てくる登場人物みたいなもので、そういう人物たちを殺していくのは楽しかったです。みなさん=観客も、それを期待してるわけだから(笑) でも、真実の
ヒーローとは、理想をもって進んでいく人のことだと思います。
という感じでした!
ザックは非常にクレバーな方で、原作の持つ意味やテーマを十分理解しつつ、とにかく原作に責任をもってクールなシーンを撮ることに徹した、、って彼がこのすごい原作に正面きって挑んだこと、そして、その努力がむくわれたことがよくわかる今日のフッテージ上映でした。
この映画、いま現在、R指定映画になりそうですが(それほど一部過激なシーンあり)、こういう重いのある映画を若い世代に是非みてもらいたいと
思いました。
ちなみに今日の僕は、ロールシャッハのマスクとシルク・スペクターのカラー 黄色と黒をコーディネートしたスーツでした(笑)