★公開1ケ月後のマイ・レビュー:「スパイダーマン3」

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2007/05/31 23:24

すぴ。

「3」について公開から1ケ月がたちました。
区切りの意味で、僕なりのレビューをまた書いておこうと思います。

今度の「3」、評価的にはBというのが相場みたいですが、実際Bをつけてる人は少ない気がします。
要はAの人とCの人と評価がまっぷたつにわかれ、
それゆえ統計的にはBになっている。
「シリーズ最高!」という賞賛と「三作の中で最低!」の声が
拮抗してるようです。
これだけ賛否両論の作品は珍しい。
そしてCをつける人は、とてもエモーショナルに出来ていた「2」に比べると見劣りする、ということじゃないでしょうか?
確かに「2」は素晴らしい作品だった。
本当に最後に幸せな気持ちにさせてくれました。

でも僕は「3」が「2」に比べて、決してドラマ的に 
またエモーショナルという点で劣ってるとは思えないのです。

スパイダーマン・シリーズは、
ヒーローアクションの体裁をかりた青春ドラマであり、
ラブストーリーでもあります。
そして、現実がそうであるように、
恋というのは
“成就させる”ことより、
“成就させた恋を育ていくこと ないし維持していく”ことの方が
はるかに難しく、人として多くのことを学ぶわけです。

「3」で描かれる、ピーターとMJの関係はまさに、
このステージだったわけです。

だからピーターの恋が成就するまでだった「2」の方が、
はるかにラブストーリーとしてのカタルシスはあったでしょう。

そう「3」にはそういうトキメキはない。
でも、恋する人間なら誰もが直面する悩みやともどい、
そしてスレ違いのさびしさが本当によく描かれている。

派手な見せ場の中で、描かれえる小さな人間ドラマ、、
そこで語られるセリフやすばらしい役者たちが見せてくれるキャラクターのちょっとした表情が、どれだけせつなく そして愛らしいこと、か。

TVのバラエティ番組で、
SMAPの稲垣くんが「スケールでかいこと(=アクションとかバトル)やってるのに、人間ドラマのスケールが小さい」と言っていたのはまさに的を得ています。
稲垣君の場合、だからスパイダーマンは好きじゃないという、
ことになるが、
スパイダーマン映画を気にいる人は、
“小さな人間ドラマ”だからこそ好きなのです。

そして、映画「スパイダーマン」シリーズで
極めて重要かつ神聖な行為として描かれるのは、
この小さな人間たちがする「キス」です。

「1」におけるMJとスパイダーマンのファーストキス、
ラストの墓場でのキス

「2」においてMJはキスによってピーターのすべてを知ろうとし、
そして二人が結ばれたことを語るラストの熱いキス。

そして「3」においては、すべての事件が、
このキスを起点に起こります。

グエンとの裏切りのキスが、順調だったピーターの日常を揺るがし始め、
MJのハリーとの禁断のキスが、ハリーをゴブリンとして覚醒させ、
それはダークなピーターの引き金となります。
そう“してはいけなかったキス”が災いを起こす、
という構造になっています。

更に「1」「2」において、ラストに近いシーンで必ずあった
ピーターとMJのキスが今回はない!
「1」のキスはピーターはMJと別れるためにキスをし
「2」においてピーターとMJはお互いを受け入れるためにキスをするのに「3」には無い。

この2人は、この先どうなるのか?またキスするのだろうか?
それは別れのキスか、
それともまた結ばれることを示唆するキスか?
ここでキス・シーンを見せないことで、
サム・ライミ監督は、ピーターとMJの未来について、
僕らに判断をゆだねるようボールを投げたわけです。

「3」は「2」に負けずとも劣らないせつなくキュートな人間ドラマです。