ご存知のように、
アメリカン・コミックスは出版社が
キャラクターの権利を持っていることが多いので、
出版社は時代ごとに、
クリエイター(ストーリーを書くライターと絵を描くアーチスト)を変えて、物語を継続させていきます。だから、ファンは、誰が書いたウルヴァリンの物語がいいとか、
このアーチストの描いたウルヴァリンのアクション・シーンがかっこいいとか、あるわけです。
僕にとって、ヒュー・ジャックマンという、
クリエイターが“演じる”という方法で、
スクリーンに描きあげた、
ウルヴァリンは、数あるウルヴァリンの中でも、
最も好きなウルヴァリンの一つかもしれません。確かに、原作の設定より、背が高いし、若いし(原作はもっと“おやじ”ですよね)、
狂気や殺気が少ないかもしれない。
でも、ヒューの描くウルヴァリンはこのキャラクターが持つ、ワイルドさの裏にある人間的な魅力を、本当にうまく表現して、アメコミ史だけにとどまらず、映画史にも残る“愛すべきアクション・ヒーロー”に
仕立ててくれました。
ではウルヴァリンの魅力とはなにか?
もともと、マーベルのヒーローは、よく悩む(=その最たるものがスパイダーマン)わけですが、このウルヴァリンという男、実はそんなにウジウジ、クヨクヨとは悩まない。いろいろ人生くらうけれど、悩む前に、怒りにその身を躍らせて、ぶったぎる、、そういう「くらう→怒る」のくりかえしなわけですが、それだけ自分の感情に素直に生きているのだと思う。だから、この男、怒りに狂って暴れるから狂暴ではあるけれど、決して凶暴ではないわけです。
この人間味が、彼が支持されてきた理由だと思います。
ヒュー・ジャックマンは、
そうしたウルヴァリンのエモ−ショナルな部分をよくわかっていて、
だから、今度のウルヴァリン、本当によく叫ぶ!(笑)
怒りの雄たけびのオンパレードです。
今までのX−MEN映画は、どちらかというと、
SFアクション仕立ての人間ドラマでした。アクションよりも、
「人は異質の者に対し寛容であるか?」というテーマが、
主のディスカッション・ドラマでした。
しかし、今回の「ウルヴァリン:X−MEN ZERO」は、
そうしたテーマ性は後退させ、ひたすらヒューが描くウルヴァリンの
かっこよさを楽しむ痛快作であり、
「くらう→怒る」のウルヴァリンの魅力に100%フォーカスをあてた、
シリーズ初のヒーロー・アクション映画になっています!
スパイダーマンのように人の命をつなぎとめる
クモの糸を発射できればいいなと思いつつ、
その一方で、
理不尽な現実をたたっきるアダマンチウムの爪も欲しいなと(笑)
まさに「右手からWEB,左手からアダマンチウム」だったらなあ。
そんなことを考えながら、幸せな気持ちで劇場を後にしました。
皆さん、是非楽しんでくださいね!
SNIKT!
今回、「ウルヴァリン:X−MEN ZERO」の劇場パンフレット &TOHOシネマズの季刊誌「T.(ティー)」に、ウルヴァリンについてのコラムを執筆しているので、よかったら是非、ご覧ください。